2005年12月01日

涙なんか見せないわ

「これつける時と、外すときどっちが間抜けかな? 」
使用済みのゴムをぷらんと見せて、彼はゴミ箱にそれを放り投げた。
4歳年下の大学生の彼は上にいようが下になろうが、構わずに攻撃してくる。
体力があると思っていたが、毎回毎回4回もされると身が持たない。
それが毎日だったら簡単に断ることもできるのだが、2週に1回程度しか会えないから強く求められているのだなと諦めている。
別に嫌いじゃないけど、少し余裕がない。

前の男はぎっくり腰をやってから、慎重にするようになったと言うような4歳年上の男だった。
少しでも調子が悪いと何もしない。
どうしてこうもベッドの上で極端な男ばかりを引いてしまうのだろう。
ただ、他人の性生活なんて知らないからこれが極端なのかわからない。

「ねー。どう思う? 」
「なんだって付けようとしている時の方が間抜けに見えるんじゃない? ブラだってそうでしょ」
「ボクは丸いおしりをこっちに向けて、肉を集めてブラを止めてるのを見るのが好きだよ」
「バカ」

彼に向かって彼の下着を投げつける。
それを受け取り彼は下着を身につけた。

「ねえ。終わりにしましょう」
「え? 」

意味が分かりかねて唖然としている。
それはそうだろう。さっきまで解け合うのではないかと思うほど、激しい行為にふけっていたのだから。
同じ立場なら同じようなリアクションを取るに違いない。
彼がしゃべり出すまで黙っている。

「ちょっと待ってなんでだよ」
やっと口にした言葉はそれだった。
「今度部署が変わるの。海外事業部」
「それがなんだよ」
「年間の大半は海外を飛び回っているわ」

一間おいて言葉を続ける。
「つまり、これまでのように会うことも出来なくなる。それにあたな就職活動があるでしょ」
「そんなの納得できないよ。俺。ずっと好きだよ。これからも。これから先も」
同じ言葉を違う言い回しで言っているのは動揺しているから?
たまらなく愛しくなる。
自分が年下だということを理解しながら背伸びをする。
時々見せるまっすぐな瞳が本当に好きだ。それは今でも変わらない。

でも、だからこそ幕を引きたいと思う。

「まだ、あいつのこと好きなの? 」
「え? 」
「絶対に一緒になれないって言っていた人」
「いきなり何をいうの」
「聞きたいんだ」
「……そうね。好きよ。恋愛対象としてではなく好き」
「そういうのはわからない。だって好きには形がないでしょ。好きは好きなんだよ」
どうしてこうも恋愛に真剣になれるのだろう。
無垢すぎる彼を傷つけているのが、はっきりわかった。
「だから、好きに形を作って誤魔化しているんだよ」
彼の言葉は彼を傷つけながら、わたしに向かってくる。

「不安だったよ。それがあったから、いつかいなくなりそうで」
彼は泣いていた。
溢れる涙をぬぐうこともせずにわたしを見ている。
「そして今日が来たんだ」

わたしは謝ることも出来ずにただ黙っていた。
長い沈黙が二人の間に流れた。

「ごめん。俺ね。大好きなんだ。だから。別れたくない」
泣きながら喋るから途切れ途切れになる。
わたしも泣いていた。
泣きながら二人で裸のまま抱き合った。

ただ、抱き合った。
強く。きつく。

どのくらいの時間の経過があったかわからない。
どちらともなく離れて着替え始めた。
わたしの着替える姿が好きだと言った彼は、背を向けたまま黙々と着替えていた。
私の着替えが終わるまで、彼は背を向けたままだった。

ラブホテルを出ると大きな通りに出るまで、手をつないで歩いた。
星はネオンにかき消されている。
上弦の月だけが夜空に浮かんでいる。

「もう連絡しないから」
彼は不器用にそれだけ言った。
「うん。それじゃ」
わたしはいつもと同じように別れた。

それぞれの道を歩むようにそこで別れた。
タクシーを呼び止め中に滑り込む。
きっと抱き合っているときに彼は自分を納得させていたのだろう。
別れると言わない代わりに連絡しない。

唇だけで形をつくる。
「さようなら」

少しだけ視界がにじんだ。
人間とはなんて勝手な生き物だろう。
自分から望んで別れたのに未練が残る。

もう一度唇で形を作る。
「ありがとう」


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posted by じい at 02:27| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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